2017年5月4日木曜日

< 鏡としてのD氏 >

 ひとつ「修正」しなくては、と感じているのは、デュテルテ君にさしたる論拠もなく肩入れしていたことだ、・・・理由ははっきりしている、・・・「独立自存の国家意思」を威勢よく「米軍を追い出す」という形で表\明したその心意気に感じ入ることを禁じ得なかったからだ。・・・その背景に「何がしかの策」が有る筈だとの期待からは、しかし、その後は、次第に遠ざかりつつあるように見えても仕方ない状況のようだ。残念だが、そんな期待を抱くこと自体が、得手勝手な思い入れの単なる情緒だった、・・・まれに伝えられるその断片から評価めいた判断をしてはいけないのだ、と改めておくことに越したことは無い。
 
けれども、にも拘らず、この御仁の言動は、注視し続けるに値する、という点はいささかも変わりない、ように思える。
日本の報道では、そもそも報道しないがために、けっして知ることができない、ほとんど把捉できもしないのだが、共産中国のアジアでの動きに対するその近隣国の対中国姿勢がどのような「変容」を遂げているのか、その「鏡」の一つであることに(たぶん)変わりがないと思われるからだ。
 
 米国民が同盟国の日本のことなどほとんど知るところがない(らしい)ことと、日本の自分等がアジア諸国の動向を知ろうともしないのはほぼ同等かもしれない、と想像する、・・・でも、そのような「環境」が、我々の対中国に関する事案のその受け留めようの軽重に大きな影響を及ぼしている可能\性がとても高いかもしれないのだ、・・・もっと深甚に受け止めねばならない「事態」を見過ごして、能\天気に井の中の蛙“風“に、暮らしているのかもしれないのだ。

3/20付けで南シナ海をめぐるこんな記事あることに偶然気付いた、・・・
『・・・ Duterte made the remarks before leaving for a state visit to Myanmar, following reports that Beijing was planning to build an environmental monitoring station in Panatag Shoal, a traditional fishing ground that it seized in 2012.
“We cannot stop China from doing this thing. The Americans cannot even stop them from doing so. My point to China is, do not do anything to my coast guard if they go there. Because they claim to own it, I claim it to be mine. In the meantime, just keep it open and don’t touch my coast guard,” Duterte told・・・.
“What do you want me to do? Declare war against China? I can’t, we will all lose our military and policemen tomorrow. We are a destroyed nation. We cannot even assert a single sentence of the provision that we signed,” he added.  』(マニラ・タイムズ)
( 中国に止めさせるなんて、できへんよ。アメリカさんかて、なんもようせんやないか。・・・なのに、オレにどうせーいうのか、戦線布告でもせよ、てか・・・そんなん、国がコッパ微塵になるんやで、・・あの証文かて、一行も持ち出せへんよ)
 フィリピンの大陸棚だと「国連機関」で認められた海域で、中国船が何やら探査しているにつけ、国防長官が“注視“を表\明したのに、・・でもD君は、
『 Earlier this month, Defense Secretary Delfin Lorenzana said he was very concerned that the ships had been seen at Benham Rise, sometimes for as long as a month.
But Duterte said: “So what if they stop there? They admit it is within the territory of the Philippines. That does not satisfy you?”
He described the complaints against China as “nit-picking.”
・・・・“We are now improving the economy because of the help of China. Why will you be so shameless just because they are passing by?” he told reporters.
 』
( それが、どないや、・・・中国かてあんたの“シマ”や云うて呉れてんねん、・・それでええのと違うんか、・・・ちっちゃな事つまみ上げて。・・・あんな、いまは、中国のお蔭で経済がようなってきてねんで、それを、中国さんがチョット通り掛かったからいうて、そんなこと言うて・・恥ずかしないんか? )

という具合に、まあ(ドあほ!)とまでは云わなかったのかは「報道」されていないが、・・・D君が、日本の関西“風“の育ちだったかは知らないし、間違っているかも知れないが、大まかにはこんな調子なのだろうか。

この「報道」は、しかし、最後に次のような「意義」を書き付けている。
『 Beijing has already reclaimed large areas around several islets and reefs in the Spratly archipelago elsewhere in the South China Sea, and installed military facilities on some of them.
However, analysts warn that building on Scarborough Shoal would radically change the situation since it is just 230 kilometers (143 miles) from Luzon.
Outposts on the shoal would put Chinese jet fighters and missiles within easy striking distance of military bases in the Philippines, some of which could host US troops.
The shoal also commands the northeast exit of the sea, so a Chinese military outpost there could stop other countries’ navies from using the waters. 』
これは、重要だと思えるから、素人にはいい加減にしか訳せない正確は期し難く、オチャラケて訳すようなことはしない。
(この新聞が、どのような傾向のある機関か、その影響力がどうなのかなど、まったく知らない)

登場当初、基地を置いていても「何もしない」そして「何もできない」米国、その上「内政干渉」する米国には怒りを露わにしてみせていたのだろうが、いまもその点は変わらずだろうが、それだけだったのか?
しかし、ここには、アセアン諸国の「本音」と、実際「どうしようもない」状況であることが現れているとみるべきならば、もはや、過去僅か10年かせいぜい20年程の「無為」の勝負の結果が紛れようもなく露わになっている、というべきだろう(断片から価値判断してはならないものの)。
 
取り戻すことはできないだろう、ましてアジアでも欧州でも少なくない諸外国から何の敬意も受けることももはや無くなって来ているとみるべき米国政状況にあっては。

そして、大いに危惧されるのは、この日本は、彼等の動向についての、何の報道も情報もなく、何の分析もなく、そこから学び摂ることもなく、ヒラメのようにその米国その他の「振り」だけみているかのようだ。
・・もはや、実際には誰であっても「何もできない」状況にまでなっていることの自己認識から始めなければならない。